0606 ウォーキングイベント@都賀地区・後編

●この記事の前編を先にご覧下さい。

http://d.hatena.ne.jp/mach-i-naka/20100607

●写真はフォトアルバムの方にもありますので、併せてご覧ください。

http://f.hatena.ne.jp/mach-i-naka/%E9%83%BD%E8%B3%80100606/



さて、栃木市に新しく仲間入りした旧・都賀町を訪ねる、というまち歩きのイベントが6月6日の日曜日に行われた。そのレポートの続編。

合戦場宿を後にして、一行は例幣使街道をずんずん北上する。カラッとした陽気だったので、爽やかな汗が滲んで良い調子である。街道に沿ってつくられた水田を目にする機会も増えてきて、ここにも井戸があった。




合戦場宿の隣は、かつての升塚村という街路村で、いわゆる商家のような、道に面して建つ建物は見当たらない。升塚では、敷地の表間口が広く、敷地を縦に割って主屋と庭をそれぞれ配し、街道に対しては塀や門を構えて、アプローチをとる。そのため、町並みは、家→庭→家→庭…という反復的な景観を生んでいる。これは、江戸時代から町としての役割を与えられ、歴史的な商業基盤から生まれた、商家が軒を連ねた町並みの景観とは対照的である。こうした、町と村の景観の違いを比較し、了解できることが、街道を通して見て歩くことの楽しみである。
升塚では、様々な生垣や庭が見られるのも楽しい。




1800年頃の町並みが描かれた分間延絵図には、街道から東西に延びる幾筋もの「野道」が描かれているが、現在も同様の小道があり、特に西側は、視線が抜けた向こうに広がる水田や、折り重なる山々の景色と、民家の生垣が町並みから幾度も垣間見える。この小道による視線の抜けを、歩を進めるたびに楽しめるのは、この地域の魅力のひとつといえる。この視線の抜けを、「都市の中で、建物と建物の隙間から見える空」と比較していたのはNさんだが、とても面白い捉え方だ。



さて、升塚もこのあたりまでか、という場所に、置屋根形式の土蔵と、冠木門を配した屋敷がある。土蔵に掲げられた看板から、時の流れが伺える。また、この屋敷の北側には、東から西へと街道を横断して流れる水路がある。こうした水路の流れが、集落の入口あるいは出口を示している例は多い。




水路の流れに沿って、街道からやや西に外れると、立派な門構えの屋敷があり、その前を流れている水路を橋で渡るというのが心憎い。水の流れと植物はとても相性がいい。
この水路の流れを遡ると、のちに紹介する家中とつながる。




升塚の隣、下新田では例幣使街道が新道と旧道に分かれる。湾曲した街道を避け、直線的に車道で結ぶという道路整備が行われた集落もまた多いが、これを一種の追分として見るセンスは、渋くて好きだ(お名前を失念してしまったが、ここを追分と見た方がいた)。
一行は旧道を進む。旧道の両側には水路が流れていて、なんとなく涼しげな印象をうける。



旧道と新道が合流するところで視界が開け、折り重なる山々の景色が広がる。やっぱりこの山並みの景色は素晴らしい。先を行かれていたAさんも佇んでいた。



家中の市街地まで歩く途中に興味深い建物がある。レンガ造の門を構えた、瀟洒な洋風の建物である。明治の中後期まで遡ると面白いが、いったい何に使われていたのだろうか。旧役場とか駐在所とか・・・



家中の市街地に近づくにつれ、歩いている歩道よりも、車道の方が徐々に高くなっていくことに気づく。



さて、家中の市街地に入る交差点の手前で、東から街道の方に流れ込んでくる水路を見つけた。水道が敷かれていない頃は、生活用水は近在の川や井戸、そして計画的に造られた水路に頼っていたので、こうした水路の流れを辿って町並みの裏へまわってみると、面白い光景に出くわすことがある、というのは経験談



今回はなんと、護岸が整備されていない、自然な水の流れを目にすることができた。市街地のすぐ裏で、この光景を見られるのは貴重だ。絶好の水遊び場じゃないか。
この水路には堰が設けられ、流れは二筋に分かれる。一方は、先ほどの街道に流れ込み、どうも例幣使街道の側溝を南へ流れているようだ。もう一方は、地図によると町並みの東裏を流れて南下し、升塚と下新田の境を流れていく。ここで目にしている水の流れが、さっき見た立派な門構えのある屋敷まで流れているのか、と頭の中でつながるのは、ちょっと感動的である。



さあ、まち歩きも終盤、家中駅から東武線の東側に沿って歩き、集合場所の中央公民館へ向かう。途中、3棟の家屋に囲まれた、中庭のようなスペースがなかなか良い雰囲気だ。



中央公民館のやや手前に、水田に囲まれ鎮座する八幡宮がある。水田はさながら池のようでもあり、佇まいが美しい。小さな子ども3人が、この水田で小魚やおたまじゃくしをとって遊ぶのも微笑ましい光景だ。
稲穂がそよぐ頃に、また訪れてみたい。




さて、まち歩きを終えたあと、スライドを使いながら皆で撮り集めた写真を見ながら談笑し、お気に入りの場所を地図に落とした。
このイベントは、今後も地域を替えて行われるが、地域の魅力を“再発見”する、というよりも、参加者自身が他所の町並みを見ながら、私の住む環境と照らし合わせて考えることや、また私の住む近所ではなくなってしまったが、この地域にはまだ残っている、といった記憶に触れる機会だということが、自らをも含めた“再認識”となり、これこそ重要なのではないか、と僕は提言したい。